大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(う)50号 判決

被告人 木村茂こと野呂賢一

〔抄 録〕

論旨は、法令適用の誤りの主張であって、要するに、盗犯等の防止及び処分に関する法律三条にいう行為前一〇年内に刑の執行を受けたとは、刑の執行の始期及び終期がともに行為前一〇年内にあることをいうと解すべきであるのに、原判決が行為の一〇年以前に刑の執行が開始し一〇年内に執行が終了した前科も右の要件にあたると解し、被告人に対し同条を適用したのは誤りである、というのである。

そこで、検討すると、なるほど原判示の三つの刑のうち最初のものは、昭和四五年一〇月八日鹿児島地方裁判所において言渡された強盗強姦未遂、窃盗罪による懲役五年の刑であり、その執行の始期は同年同月二三日、終期は昭和五一年五月二日であるから、執行の始期が本件の最初の窃盗行為が行われた昭和五六年四月一日ころの一〇年以前であることが明らかである。また、盗犯等の防止及び処分に関する法律三条は、行為前一〇年内に刑の執行を受けたこと及びその刑が六月の懲役以上の刑であることを要件に定めている点をあわせ考えると、所論のように、行為前一〇年内に六月の懲役以上の刑の執行を全部受けたこと、つまりは六月の懲役以上の刑の執行の始期及び終期がともに行為前一〇年内にあることを要件とする趣旨であるとも解されないわけではないが、このように解するときは、同条が特に刑の執行を受けたことを要件とし、他の法令におけるように刑の執行を受け終ったことを要件としていない点と調和しないし、行為前一〇年内に刑の執行の一部を受けた場合も刑の執行を受けた事実があるという意味で刑の執行を受けたという要件に文言上も該当するといってすこしも不自然ではないから、同条は、刑の始期又は終期が行為前一〇年内にあったか否かを問わず、行為前一〇年内に刑の執行の全部又は一部を受けたことをその要件とする趣旨であると解するのが相当である。

(千葉 香城 植村)

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